今日は、先代猫「ナナ」の命日だ
ナナとの出会いは
ある日、妻がやせ細って通りを歩いていた
ノラの子猫を連れてきたことから始まった
思えば我が家で猫を飼うのは
実に三十年ぶりのことだった
家に連れてきてすぐ
「きっとお腹が空いているだろう」と
家にあったご飯に鰹節をかけて
いわゆる“猫まんま”をあげようとした
ところが、よそったご飯を置いた瞬間
ナナは鰹節を待つこともなく
白いご飯をガツガツと食べ始めた
その様子を見て
「よほど空腹だったのだろう」と
胸が少し締めつけられたのを覚えている
それからのナナは、実に手のかからない
賢い猫だった
何の躾もしないのに
トイレはきちんと猫用トイレを使い
爪とぎも、用意した所でしかしない
まるで最初からここが自分の家だと
わかっているかのようだった
そして夜になると
これまた、昔飼っていた猫と同じように
当然の顔をして私の布団に入り込み
一緒に眠った
時にはリードを付けて、一緒に散歩したり
家の中で家族と遊んだり…
久しぶりの“猫のいる暮らし”を
私たちは心から楽しんでいた
しかし、そんな穏やかな時間は
あまりにも突然終わりを迎えた
翌年…まだ一歳にも満たない頃
ナナは事故で亡くなってしまった
あまりにも早すぎる別れだった
昨日まで当たり前のようにそこにいた
小さな命が、もうどこにもいない
その現実を受け入れる事は
なかなか出来なかった
胸の奥にぽっかりと空いた穴は大きく
しばらくは何をしていても
その穴の存在を感じずにはいられなかった
その時「もう二度と、猫は飼わない」と
私は強く思った
それほどに、ナナが残していったものは
大きかったのだと思う
こうして命日を迎え
あの日のことを思い返してみると
ナナと過ごした短い時間の温かさが
よみがえってくる
白いご飯を夢中で食べていた姿も
夜になると当たり前のように
隣にいたぬくもりも
すべてが、今ではかけがえのない記憶だ
ナナは、本当に短い時間ではあったが
私たちに「幸せな時間」を残してくれた
毎年この命日が来る度に
思い出しては、冥福を祈っている
今年は十七回忌である


