昔一度だけ海外に行ったことがある
私の唯一の海外旅行である
行き先はアメリカ・ニューヨーク
4泊6日の旅だ
この話は、その後ずいぶん長いこと
私の“鉄板ネタ”になった
海外旅行や英語の話になると
すかさずこう言う
「アメリカ生活が長かったからねぇ」
「へえ、どのくらい?」
「4泊」
ここで相手がきれいにズッコケてくれると
内心ほくそ笑む
長年使い続けてきたネタだが
今でもチャンスがあると使っている
しかし、ふと振り返ってみると
この「一度だけ」というのは
海外旅行に限った話ではないことに気づく
仕事でさえそうだ
民間の会社に一度、国家公務員を一度
そして会社経営も一度
どれも長短はあれど
結局は「一度きり」の経験だ
家族旅行もそうだ
北海道に一度、佐渡に一度、岩手に一度
そしてディズニーランドも一度
どれも二度三度と行っていそうなものだが
なぜか私の場合は一回限りで終わっている
さらに思い出をたぐれば
登山、カヌー、気球、ヘリコプター遊覧
剣道、居合道、レタリング、将棋、発明
ステンドグラス制作……どれもこれも
胸を張って「やったことある」と言えるが
同時に「一度しかやってない」とも言える
「なんだかなぁ」と思わなくもない
どれも極めていないし、続いてもいない
だが、考え方を少し変えてみる
一度でもやったことがある
というのは、ゼロよりはるかに豊かだ
しかも、それがこれだけ種類豊富となると
これはこれで、なかなか悪くない
むしろ私の人生は
「一度きりの体験コレクション」とでも
呼ぶべきものかもしれない
人はつい
何かを続けた長さや深さで判断しがちだ
だが、広さで測る人生があってもいい
そう思うと、一度だけの
あのニューヨークへの旅も
広げた、広げた
「アメリカ生活が長かったからねぇ」
「へえ、どのくらい?」
「4泊」
