鳴かぬなら

歴史の人物には
性格を言い表すような有名な句があります

徳川家康は
「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」

豊臣秀吉は
「鳴かぬなら鳴かしてみせよう…」

そして、織田信長は
「鳴かぬなら殺してしまえ…」

と、よく語られます

どこまで史実かはさておき
それぞれの人物像を象徴する話として
昔から語り継がれてきました

そんな話を思い出すたび
私はもう一つの言葉を思い浮かべます

経営の神様と呼ばれた
松下幸之助 の言葉です

「鳴かぬならそれもまた良しホトトギス」

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無理に鳴かせようともしない
怒って切り捨てるわけでもない

鳴かないなら、鳴かないまま受け入れる
そんな大らかな境地を感じさせる言葉

実は、私が五十歳を過ぎてから
新しい事業を始めた時

まさにこの「それもまた良し」を
地で行くような相棒が、そばにいました

表向きは私が社長という肩書
でも、私の中でのトップは10歳下の相棒
私はむしろ副の立場の気持ちでした

そもそも、その新事業は
彼からの誘いがなければ始まっていません

私一人なら、
「もうこの年齢だし…」
と、きっと二の足を踏んでいたでしょう

けれど彼は、焦らず、押しつけず
いつの間にか 人を動かしている

人を相手の仕事は、うまくいく時もあれば
思うように進まない時もあります

そんな時でも彼は、
慌てるでもなく、怒るでもなく

「まあ、それもまた良し」
そんな姿に、何度も救われました

経営というものは
理屈や計画だけでは進みません

人の気持ち、流れ、偶然、縁
いろいろと重なって、形になっていきます

彼には、そうしたものを柔らかく受け入れ
進めていく度量がありました

だからこそ、私たちの事業は
大きな波に翻弄されることもなく
静かに、しかし確実に続いていきました

そして最終的には
無事に後継者へと引き継ぐ事が出来ました

振り返ってみると
私一人ではとても歩けなかった道です

隣に彼がいたからこそ
ここまで来ることが出来ました

「鳴かぬならそれもまた良しホトトギス」
これは 相棒を思い出すキーワードです

そして
彼には、いくら感謝してもしきれません