肉を焼きながら食べる焼肉
若い頃は、網の上に乗せた肉が
ジュウジュウと音を立てるのを見ながら
「まだか、まだか」と、箸を構えて
待っていたものだ
少し赤みが残っていようが
「これくらいでいいだろう」と
半ば強引に口に放り込んだりもしていた
それが今ではどうだろう
妻と向かい合うホットプレートの上では
肉がやけに早く焼き上がる
いや、正確に言えば
こちらの食べるスピードが落ちているのだ
「もう焼けたのか」忙しいなあ、と思う
結果、どうなるかというと…
焦げ気味の焼けた肉が皿にたまり始める
それで、「ちょっとストップ」
時々ホットプレートのスイッチを切る
かつての自分たちには考えられない事だ
さらに食べる量も
若い頃の半分にも満たなくなっている
家計的には実に優秀だ
だが、どこかこう、私たち夫婦の
店終いが近づいて来ているのかも、という
そんな寂しさも感じたりする
「老いて益々盛ん」なんてのは
我々夫婦には何かあるのかな…などと
妻と顔を見合わせる
「じゃあ、何か新しく始めようか」
運動でもいいし、趣味でもいい
旅行でも、何か勉強でもいい
老いて益々盛ん、の“何か”を探そう
…そして気がつくと
もう一年くらい平気で経っている
「あれ、前も同じ事言ってなかった?」
「言ってた気がする…」
ホットプレートのスイッチを切りながら
そんな会話をしている
どうやら我々夫婦は、
新しいことを“始める”前に
すでに、焦げ付かせてしまったようだ
