幻の入賞ランナー

二十代の初めから、かれこれ半世紀
朝のジョギングと筋トレが
私の生活のどこかにずっと居座っている

でも、ストイックなアスリートではない
途中何年も抜けた時期もある

最近は、年齢もあり
どちらも週一で、内容も半分ほどになった

そんな中で
唯一“本気”だった時期がある。五十代だ

毎朝5kmを走り、筋トレをしてから出勤
今思えば、よくそんな元気があったものだ
と、我ながら感心する

きっかけは、町のマラソン大会だった
軽い気持ちで出てみたが、入賞はならず
翌年も挑戦したが、やはり届かない

ここで火がついた

「来年こそは入賞してやる」

ジョギングは「ランニング」に昇格し
時計を見ながらの本格仕様になった

そして一年後

タイムは、かなり向上していた
「これはいける」
いや、「間違いなく入賞だろう」と思った

ところが…

大会が近づいても、募集の気配がない
例年なら、とっくに案内が出ている時期だ

居ても立っても居られず、問い合わせた

「今年から開催しなくなりました」

「え?…えー!」

思わず声が出た

電話口の向こうは事務的だったが
こちらはそうはいかない
この一年、何のために走りこんできたのか

入賞を確信出来るところまで仕上げてきて
ピークの状態になっていたのに
肝心の“本番”が消えるとは…

人をその気にさせて、梯子が外されたのだ

結局、その年、私はどこにも出場せず、
「入賞できたはず」の記憶だけが残った

ワンチャンスだったのに、本当に悔しい

でも、走りこんだ事実は消えない
あの一年の積み重ねは
確実に体のどこかに残っている…はずだ

少なくとも、無駄ではなかった
そう思うことにしている…けど…