二十代の初め
「発明」に取り憑かれていた時期がある
とはいえ、世紀の大発明などではない
実用新案という、生活のちょっとした不便
それを解消する類のものだ

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出願などを支援してくれる団体に入り
月刊誌を購読し、アイデアを思いついては
「これはいけるんじゃないか」と
時折、一人で盛り上がっていた
でも実際に出願したのは、二つか三つだけ
それでも当時の私は本気だった
たとえば、自動車の改良型ワイパー
「これは絶対、採用される」と思い込み
意気揚々と売込の手紙を書いた
送り先は、トヨタ、日産、三菱といった
ずいぶんと身の程知らずな相手である
またある時は
銀行の販促品のアイデアを思いつき
これまた超一流銀行へ売り込みをかけた
今考えると、どれも大した考案ではない
だが、当時は違った
頭の中では、すでに商品化され
全国に広まり、印税が転がり込んでくる
という未来図まで完成していたのだから
若さというのは実に頼もしい
売込の結果…
ほとんどの企業がきちんと返事をくれたが
当然のごとく、採用されたものは無し
だが、驚いたのはその「断られ方」だ
「すでに同様の出願がありますので…」と
公開資料の写しを同封してくれた会社や
「今回は見送らせていただきます」と
丁寧な文面に粗品まで添えてくれた会社も
どこの誰とも分からない若造が
思いつきのようなアイデアを一方的に
送りつけているにもかかわらず
一流企業はきちんと向き合ってくれた
「一流とはこういうものか」と感心し
そして学ばせていただいた
結局、アイデアは開花させられなかったが
一流企業に迷惑をかける、という才能は
すでに開花していたようだ
