「もし過去に戻れるとしたら
いつにする?」
この質問には
たいてい“夢”が乗っかっている
やり直し、失敗の修正、別の自分
いわば人生のリセットボタンだ
だが私は、そのボタンを前にしても
絶対押さない。押したくない

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あの頃に戻れたら
もう少しうまくやれたんじゃないか
そう思わないわけでもない
けれど同時に、こうも思うのだ
「本当に、もっとうまくやれるのか?」
記憶を持ったまま戻れるとしても
未来がもっと良く進む保証はどこにも無い
むしろ、やり直したことにより
さらに悪い結果になったりするかも
あの時たまたま通った道
たまたま受けた電話
たまたま声をかけた一言
そんな「たまたま」の積み重ねが
今の自分を形作っている
多くの人は
「もっと良くなる未来」を思い描いて
過去に戻りたがる
だが私は
「今より悪くならない保証はどこにも無い」
という事の方が、恐ろしい
それに、戻るということは
“今あるもの”を失うという事でもある
今の生活、今の環境
そして今そばにいる人たち
中でも、妻との出会いは
私の中で、とても、とても、とても
大きな位置を占めている
あの出会いが無数の偶然の上に
成り立っているのだとすれば
それ以前に戻るという事は
その奇跡を自ら手放す行為に等しい
同じ人に、同じ形で
もう一度出会える保証など、どこにもない
だからもし、また同じ質問をされたら
必ずこう答える
「絶対どこにも戻りたくない」
そして心の中で、こう付け加える
「このままで、いい」
「このままが、いい」
